8. 第六日目〜第七日目

 パリはヨーロッパ最大の都市である。と言っても東京の山手線の線路の中にすっぽりと収まる大きさだ。これで最大の都市なのだから、他の街がいかに小さいのかがお判り頂けると思う。ドイツが完全な地方分権自治体制なのに対し、フランスは日本と同じ様な中央集権体制である。もちろんこれは一概に優劣をつけられる問題ではないが、パリもまた東京と同じ様に、官公庁や企業が集中し、地価の値上がりや物価高、環境の悪化などが問題となっている。しかし、東京と大きく異なる点は、そこここに文化の薫りが漂うことであろう。今までに色々な人達によって語り尽くされて来たが、「たかがパリ、されどパリ」である。
 同じヨーロッパに住み、環境には慣れている筈の筆者でさえ、パリに行くと一種独特なものを感じる。しかしそれは例え筆者と言えども非居住者の目であって、パリに住む友人の語るところによると、住み心地はドイツと何ら変わる所がなく、お世辞にもいいとは言えないらしい。しかし観光的にはドイツとは桁違いに違って、見るべき所が多い。旅行業界では「ロンパリローマ」という言い方をするのだが、やはりヨーロッパ観光の目玉となるのは、ロンドン・パリ・ローマの三大都市という事になるが、実際の日本人入国者数を見ると、ロンドン、フランクフルト、パリの順になっている。
 今回のこのバーチャルツアーでは、他の多くの既製のツアーと同じ様に二日間のパリ滞在になっているが、パリの見所を一通り見て廻ろうと思ったら、実は一週間は必要である。たがらほとんどのツアーでは駆け足になってしまうし、その上ショッピングの予定もある訳だから、時間はいくらあっても足りない。
 日本人的感覚として、なるべく買い物は最後にしようというものがある。最初に買うと荷物になって大変だから、とか、もっと後でいいものが見つかるんじゃないか、というものだが、筆者も日本人なのでこの考えは良く判るのだが、しかしこれはヨーロッパ旅行には当てはまらない。目まぐるしく国が変わるヨーロッパ旅行では、同じ物が次の街にもあるとは限らないし、特に最後の訪問先がパリになっている事が多い為に、いいや最後のパリで買おう、パリに行けば何とかなるさ、などと思っていると、結局ショッピングの時間なんてなくなって、何もめぼしい物が買えないままに帰国、という事になりかねない。筆者は現役の時にお客に口が酸っぱくなる程言って来たのは、「欲しいと思う物があったら今買っておく事」である。人間勝手なもので、衝動買いをしてしまった悔いはさほどでもないが、欲しかったのに買えなかったという悔いは長く尾を引くものである。どうしてもルイヴィトンやシャネルの本店で買いたい、という様な特殊な希望の場合は別として、それ以外の場合は、見つけた時に買っておく、というのが鉄則と言えよう。
 パリはお土産物に関しても目白押しである。前述の様なフランスの有名ブランドはもちろん、ヨーロッパ中のブランド品が溢れている。また、日本人観光客用のお土産物屋さんも多く、昔から過当競争状態である。プロテンをやっていた時代、一番嫌なのがこのパリのお土産物屋の営業攻勢であった。空港や駅などに到着した時に挨拶に来る位なら、別に構わないが、ホテルの部屋に早朝と言わず深夜と言わず営業の電話がかかってくる。時にはどうしても時間が取れなくてそのお店には寄れない場合だってある。そんな時にそれを正直に伝えると、相手の口調はもうほとんどヤクザの脅迫である。パリに限らず、お土産物屋には言いたい事が山ほどあるので、これは後ほど詳しく触れるとするが、とにかく筆者はパリのお土産物屋は大嫌いである。