9. 第八日目

 まあ色々あって、かなりの駆け足ではあったが、一通りパリの表面を垣間見た所で、もう帰国となる。これも行きと一緒で、直行便なら10時間半程度で日本へ着くのでまだ楽だが、どこかを経由して行く便だと、例によって15から16時間程かかる。時差の関係で帰りは余計時間がかかった様に感じるが、実は気流の影響で、ヨーロッパから日本へ飛ぶ方が、同じ距離なのに飛行時間が短い。行きは成田を飛び立ってから到着地までずっと昼間が続いていたが、帰りは飛び立つとすぐに夜になり、成田に着く直前で夜が明けてくるので、ずっと寝ていればいい。
 飛行機の中でいかに寝るかが、楽に旅をする秘訣である。よく窓際の席にこだわる人がいるが、実際に飛び立ってしまうとロクなものは見えないし、映画が始まれば窓は閉めさせられる。おまけに窓際だとこの窓の開け閉めも協力させられるので、仕事が一つ多くなる訳だ。ましてやエコノミークラスでは窓側の座席は三人掛けなので、窓際に座ってしまうとトイレに立つのも大変で、特に隣の二人が見ず知らずの人で更に寝たりすると、わざわざ起こすのも悪くて気疲れしてしまう。ビジネスクラスやファーストクラスでは座席幅も広いので、窓際からでも隣の人に気遣わないで席を立つ事が出来るが、エコノミーではそうはいかない。でも、エコノミーにもいい所がある。これは機内が空いていれば、という前提付きであるが、もし三人掛けないしは四人掛けの席に一人で座れる様な事があれば、肘掛けを上げてしまえば楽に横になる事が出来る。しかしビジネスクラスやファーストクラスでは肘掛けが動かないので、こういう訳にはいかない。どうせ機内食なんてロクなものじゃないのだから、筆者は搭乗前にきっちりと食事をして、飛び立ったらすぐに寝る事にしている。プライベートな旅行で筆者は一度ひどく疲れている時に搭乗した事があり、この時には搭乗して着席し、シートベルトをした途端に眠りに落ちてしまい、次に気づいたのはシップが成田に着陸したショックで揺れた時であった。この時ばかりは本当にヨーロッパ〜日本間が近く感じられた。それ以来、筆者はとにかく機内では寝る事に徹しているのである。

 そしていよいよ成田に到着、ヨーロッパからだとほとんど検疫検査はないので、入国審査と荷物のピックアップ、そして税関を越えるとツアーは解散となる。本当にお疲れ様でした。